2016 年 7 月 7 日 或る夏のカフェへの手紙

Dear. あの日のマスター

 

 

あれは去年の今頃。
暑い日でしたね。
あの日、運動がてらちょっと遠出して、
海岸沿いをサイクリングしていたとき、
あなたのお店を発見しました。

 

海のすぐ近くの洒落たカフェ。
外のテラス席から店内へは仕切りが無く、
風通しのいい開放的な空間。

 

心地よいボサノバが流れ、
ちょっとしたリゾート感を満喫できる
なかなかイカしたお店でしたね。

 

暑かったので、冷たくてシュワっとした
ビールを飲みたいところでしたが、
ヘロヘロになるわけにはいかないので
「冷たくてシュワっ」だけでもと
コーラを注文することにした私は
あなたに声をかけました。

 

アロハシャツ姿のあなたは、
かしこまりすぎず、
程よく砕けた絶妙な接客で、
リゾート感を上手く演出していましたね。

 

私は「いい店見つけたな」
なんて思いながら
その時間と空間を楽しんでいたんですよ。

 

しばらく、見るとはなしに
店内を見回していると、
おやおや?
開放感あまって厨房の様子が丸見えです。

 

そこではあなたがグラスに氷を入れ、
2リットルのペットボトルから
コーラを注ぎ入れています。

 

・・・・・・。

 

多分あの見覚えのある
赤いラベルのペットボトルは
スーパーで買えば1本158円ぐらい。
コップ一杯分で15〜19円といったところでしょうか。

 

一方、
さっき注文したコーラは380円・・・。

 

 

 

わかってます。

 

氷代、
ストロー代、
家賃、
人件費、
光熱費、
ダスキンマットのリース代、
有線放送の月額、
宣伝広告費、
税金、
その他諸経費・・・。

 

でしょ?
そんなことはわかってるんです。

 

もっと言えば、
そんなものであろうことも、
最初からわかってます。

 

お店で出てくるコーラが
特別な高級品だなんて
思ってません。

 

乗っかってるんです。
このコーラの価値が、
雰囲気やサービスも込みで
380円にあたいする・・・
というあなたの演出に
乗っかってるんです。

 

エンターテインメントに対して
お金を払っているんです。

 

このマジックショーを成立させるために
必死に騙されようとしてるんですよ。

 

お願いです。
どうか気持ちよく騙して下さい。

 

協力は惜しみませんから。

 

惜しみませんけど
服の袖から鳩がはみ出てたら
もうフォローのしようがないんですよ。

 

厨房に壁を設置して下さい。
無理なら手元だけでも隠れるよう、
ついたてを設置して下さい。
それも無理ならペットボトルの
赤いラベルをはがしておいて下さい。

 

それさえやっておいて貰えれば
あとは上手に騙されてみせますから・・・。

 

今年も海が恋しい季節がやって来ました。
また、寄らせてもらって大丈夫ですか?

 

この夏。
どうかひとつ、
上手く騙しては貰えないでしょうか・・・。

 

 

PR39営業部長の林より