2015 年 11 月 23 日 ニッチは高くつく?

一緒に仕事をしているデザイナーさんから聞いた話です。

 

 

彼は現在、新規取引先の某建設会社の商品紹介パンフレットを製作しているそうです。

 

その中で先日、
先方のご担当者とこんなやり取りがあったそうです。

 

お客様「・・・で、ここにマンションの解体現場の写真を入れたいんですけど」
デザイナー「なるほど、写真データはすぐにいただけますか?」
客「いや、ないのでフリー素材でお願いしたいんですけど・・・」
デ「・・・探してみますけど、多分有料のものを買うしかないですよ・・・」
客「え?デザイナーさんってそういうの持ってるんじゃないんですか?」

 

彼は、

「プロのデザイナーなら、こんなこともあろうかと
『マンションの解体現場写真素材集』を持っているだろう。
とお思いで?」

 

と、言いたいのを抑え、
「空、海、野菜、ビルみたいな

汎用性の高いものならある程度揃えていますが、

今回みたいな専門的な写真素材は

ちょっと持ち合わせがないんですよ」

と答え、

 

「そうなんですか・・・じゃあ、有料でもいいのでお願いします」

 

と、なって事なきをえたそうです。

 

 

このようなやり取りは、
商業デザインの世界ではかなりの「あるあるネタ」のようで、

「フリー素材」に対して夢のような解釈をされていて、
どんな写真でもタダで手に入ると思っているお客様は、意外と多いみたいです。

 

 

ニッチはお金がかかる

 

 

画一的に大量生産され、大量消費されるものなら、
仕入れコスト、生産コスト、加工コスト、流通コストなど、
スケールメリットと効率化で引き下げることが可能です。

 

例えば、今回のフリー素材でいえば、
「空」「海」のようなものなら、
業種を問わずどうにでも使い回しがきくので
とりあえず買っておくことができます。

 

そんなデザイナーがたくさんいるから、
「空」「海」の素材はたくさん出回っているし、
とても安価で手に入ります。

 

 

でも「マンションの解体現場」という超ニッチな写真は、
一生に一度使うかどうか。

 

こんなことでもなければ、
入手しようなどと、よぎりもしません。

 

かといって、
その写真がなければこのパンフレットは成立しない。

ならば、少々値段が高くても買うしかありません

 

 

これは、悲しいことでしょうか?

 

 

いいえ。

 

 

なぜなら、自分が売り手になったときのことを考えて下さい。

 

 

例えば、あなたが「はさみ」を売ることになったとします。

 

どうせならたくさんの人に買ってほしいですよね。

 

そうすると、
子供でも大人でも使いやすくて、
薄い紙から段ボールまで切れる「万能ばさみ」を売れば、

需要はありそうですよね?

 

確かに需要はあるでしょう。

 

でも、それを欲しがる人たちは、
近所の100円ショップで、最安値で買おうとします。

 

万能どうでもいいの裏返し。

 

「競合ひしめく中での価格競争こそが商売だ!」と思っているなら、
また、そこにエクスタシーを感じるならそれでいいでしょう。

 

でも大多数の人は、それは避けたいですよね?

 

そうなると同じ「はさみ」でも、
美容師専用の髪切りばさみや、
外科専用の糸切りばさみ(あるのか知らないですけど)を選んだ方が、
マーケットこそニッチですが、
高価格で売れると思いませんか?

 

ましてや、
美容師にしろ、医者にしろ、
無いと困るものです。

低品質で安価なものより、

高価でも高品質なものを選ぶはずです。

 

何しろ、失敗の許されない場面で使うはさみです。

 

そのかわり、売る側も失敗は許されません。
常にプロの要求を満たす商品力を磨き続けなければいけません。

 

 

量産品を扱うか、
ニッチを扱うか。

 

一長一短あります。

 

どちらを選ぶかはそれぞれの自由です。

 

ただ、大多数の人が何だかんだ言いながらも、
吸い寄せられるように大手競合に立ち向かうはめに陥り、
あえなく散っていく様を幾度ともなく見てきた経験から、
強い決意を持ってニッチを選ぶことが正解のような気がします。

 

少なくとも、スタートアップの時点では・・・。

だって、
松下幸之助も、豊田佐吉も、ニッチスターターでしょ?

 

 

 

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